5. ビールのコップ
4. 柳行李
3. あさり豆腐
2. 長芋とれんこんのバタ焼
1. かぶの浅漬け
 まったく好みの問題だけれど、ビールのコップはうすくて軽くて小ぶりなのに限ると思う。
ぺたりと平らな底も薄くて、ほとんど重みを感じない。
 もちろんビールだけでなく、お酒やジュースもおいしく飲める。牛乳はちょっと厚めがいいと思うのは、牛乳瓶の印象か。

 デパートに行けば、すっきりとした申し分のない薄手のがあるけれど、ちょっと古いもので探すと、オーソドックスな格子をはじめ、いろんな切子の模様があって、好きな柄をえらぶのもまたたのしみだ。花や竹、珍しいのではヨットなんかの模様が細く切ってあり、昭和なかごろの手づくりなのか、ぽつぽつと気泡もみえて、揃いでもどことなくわずかに違いがあるような、ゆるいところも愛嬌だ。

 もうすこし遅い時代に量販された「ビールグラス」や、景品で出回った酒蔵メーカーの名入りグラスもよく見るけれど、いずれも厚手で、ビールにはいささか重たい。
赤や青に色着けされた本式の切子はずっと値が張るし、なんでもない古いコップが狙い目だ。

 気に入ったのが見つかったら、骨董市では汚れをとくと調べよう。とくに硝子は傷なのか、洗って落ちる汚れであるか、検分がひつようだ。

 だいじなコップはお湯で洗って、口のところだけでもすぐに麻などの布巾で拭いておくと、水の跡がのこらずいつでも気持よく飲める。ただ薄手のコップは割れやすいのが泣きどころ。あわてて洗うのは禁物だ。うっかり落とせばすぐ壊れるし、氷を手荒く入れただけで、ぱりんとあえなくひびが入る。古いものは、買いなおしがきかないので、気に入った揃いでも、割れてしまえばそれきりだ。

 かくして愛用の薄いコップを次々に葬った末、ゆったりと家事のできないうちは、ごく薄手をあきらめて、やや薄めで手を打とうと腹を決めて骨董市へ出かけると、最初の店で手ごろな5客揃いに出くわした。こういうときはめぐりあわせと心得て、ぜんぶ見てからなんて言わずにさっさと決めるのが筋だろう。
「こんなので冷えたビール飲んだらうまいよねえ」とヒマそうな店番のおじさんたちに声かけられて、新聞で包んでもらう。

 デパートのグラス1つの値段で揃いを手にいれ、そのほかに地べたに転がっているすり鉢や鍋をざっと見る。古本屋の均一台にあたる店先の100円コーナーみたい箱に、おもしろい貝がらの平皿をみつけてひっくり返すと、型絵の作家、芹沢けい介の銘があってこれも買う。それからハンバーグのソース入れに使えそうなミルク注ぎやら、がらくた一山で適当に値をつけてもらい、アルミの片口をおまけにもらって、今日の買出しはもう満足の収穫だ。
 電車ではるばるやってきて、骨董市をぐるっとまわって皿一枚の日もあれば、モノに呼ばれるこんな日もまれにある。

 どこから来たとも知れぬコップは、こうしてわが家の戸棚に納まり、朝はジュース、昼にはソーダ、そして夜は冷凍庫でしっかり冷えて、今日も出番をじっと待つ。(本間さとみ)