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春に蒔いた朝顔が、今年もちらほら咲きだした。日よけ代わりに窓辺に這わせ、いくつ咲いたか数えるのが、夏の朝のたのしみだ。長くても夕方までのはかなさゆえか、一輪たりとも見逃すまいと思わせる花である。朝には青い花のいろが、くもりの日など萎れずにいると、夕がた紫に変わっているのもなにか不思議でおもしろい。 朝顔が唐の国から渡ってきたのは奈良時代といわれるが、人気が出たのは園芸ブームの江戸時代。菊や椿、躑躅(ツツジ)とならんで風流人を虜にしたのは、いまのラッパ型とは似ても似つかぬ変化朝顔といわれる珍妙きわまる品種であった。 花のかたちは桔梗咲や撫子咲ほか、花びらの端がカールした巻絹(まきぎぬ)、二重はむろん三重の三段、風鈴型の花弁の獅子咲、平べったい石畳など、花のもようも白い縁取りの覆輪や、二色の染分け、半分だけが縦縞の半月絞や鳴海絞、ぼかしの吹上絞など、呉服屋のような品揃え。花のみならず石化(せっか)と呼ばれる平らな茎や、葉っぱのかたちも現在のこる千鳥や雀、州浜に葵(あおい)、珍しいのは細くちぢれた宝蓑や唐草雨龍(あまりょう)などざっと40種ばかり、これらの要素を組合わせたその名はたとえば「孔雀変化林風極紅車狂追抱花真蔓葉数蕾生(くじゃくへんかりんぷうごくべにくるまくるいおいかかえばなしんつるはかずつぼみはえ)」と花とも思えぬ仰々しさ。 新種づくりに精出したのは幕臣、僧侶や町人が主で、ヒマのない庶民は鉢を買い求め、もっぱら花をたのしんだ。変化朝顔を生んだといわれる植木商ゆかりの東京は入谷では、いまでも毎年7月の6〜8日に朝顔市で人を呼ぶ。千葉の国立歴史博物館でも伝統の朝顔展は恒例だ。鹿児島では島津家ゆかりの仙厳園で、やはり夏ごとに朝顔展が催される。 歴博 伝統の朝顔 http://www.rekihaku.ac.jp/kikaku/index76/index.html 入谷 朝顔市 http://www.dentan.jp/asagao/gao0.html 鹿児島 仙厳園 磯の朝顔展 http://www.shimadzu-web.co.jp/asagao/index.asp 根気よく掛け合わせ、人も驚く奇花を咲かせる楽しみは、手がかかるほど人を惹きつけ、いまでもその志を種とともに引き継ぐ愛好家も多い。 アサガオホームページ http://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/ 花たより http://www3.ocn.ne.jp/~efukushi/asagao.htm 変化ならぬ並朝顔は、めったに枯れない丈夫さが頼もしい。水くらいはせっせと撒いて、明日を待つふっくらとしたつぼみを見るのがまたうれしい。来年はひとつ朝顔の浴衣でもこしらえて、日よけの労に報いるか。(本間さとみ) |
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