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つつじが終わり、あじさいが緑に映えて、今年もいよいよ梅雨の入り。降り込められると、身につけるものに明るい色がほしくなる。気に入りの傘一本あれば、せめて気分は晴らしてくれる。ビニール傘の手軽さと、電車に乗ってはうっかり忘れる悔しさで、いつやら安物ぞろいでは、雨もいっそう気がふさぐ。傘くらいはよいものを服にあわせて持ちたいものだ。 さいきんは、改良の末きれいなプリントを施したビニール傘が人気とか、紫外線や日光遮断と素材も技術もどんどん進んでいるようだ。洋傘にも職人芸は受け継がれ、生地はもちろん骨や手元の材にも贅を尽くし、美しいかたちを求めて一本いっぽん作られている。思えば煙草入れや根付がめずらしくなった昨今、とりわけ男のひとにとっては持ち物に趣味を凝らせる貴重な道具といえそうだ。 手づくり傘はさすがに細工がひと味ちがう。8本がふつうの骨を16本にふやしたり、目立つ手元は竹、藤、桜、革はもちろん、動物の頭もユニークだ。生地だってプリントではなく色の数だけ型紙をとり、手捺染で仕上げるほぐし織りの洋風柄、カーテン地や木綿レースが繊細なパラソルや、浴衣にぴったりの縮緬など、店ごとにお得意があり、オーダーメードができるのもいい。 前原光栄商店 http://www.kasaya.com/maehara/ モンブランヤマグチ http://www.kasaya.com/yamaguchi/index.htm ワカオ http://www.kasaya.com/wakao/index.htm 小宮 http://www.kasaya.com/komiya/index.htm 米田 http://www.kasaya.com/takumi/yoneda1.htm 洋傘もいいけれど、きもの用にひとつ持ちたいのが和傘。材料の竹や漆、柿渋にごま油、そして美濃和紙のそろう岐阜では、いまでも12ヵ所でつくられているそうだ。10月から12月のあいだに採れる時季(とき)竹を割って骨に削ったものを染め、柄竹の部分と組みあわせ、裁断した手漉き和紙を張る20もの工程がある。江戸時代から使われはじめ、藩の財政も支えたほどいっときは盛んになった。時代劇でみる浪人の内職といえば傘張りと決まっているが、周りの軒紙、外側の平紙、芯の中井紙と張るだけでも3段階、そう簡単な筈がない。ベンガラとえごま油で仕上げるまで、塗り張りのたび天日干しする天気まかせの作業ゆえ、傘職人の天気予報頼はまちがいがないという。 藤沢商会 http://www.ccom.or.jp/fujisawa/ 粋な町でもないかぎり、ふだん目にする機会は減ったが、歌舞伎や舞踊では欠かせない小道具だ。寄席でなじみの太神楽では、額やあごや肩に乗せた番傘で鞠や升、金輪や茶碗をまわすのは基本の芸だが、末広がりで縁起がいいので祝いの席でも人気がある。歌舞伎の花道で見栄をきる助六といえば蛇の目だし、稲瀬川にずらりと並ぶ白波五人男が手に手にかざすご存じの「志ら波」印は、男ぶりをかくさぬ平たい番傘だ。姿のよさこそ和傘の命。鮮やかな地色にくっきり白く抜いた蛇の目、紙切り職人の技をこらした小紋などの風流傘は、竹と紙の芸術だ。洒落た蛇の目は粗をかくして器量をあげる。夜目遠目傘のうち、ビニール傘では成り立たぬ。(本間さとみ) |
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