073.甘味に緑茶

 072.平日の美術館

 071.衣替え一考

 070.魅惑のカレイドスコープ

 069.チェコアニメーションの巨匠たち

 068.浴衣で盆踊り

 067.あなたの布団はどれですか

 066.レシピサイトレポート

 065.蚊遣りのけむり

 064.ぶらり熱帯、食虫植物

 063.オンラインデパート巡礼

 062.うちわの風

 061.タオルも手ぬぐいも

 060.真夏の夜の映画

 059.朝顔いまむかし

 058.笹の葉さらさら

 057.ディックブルーナ

 056.和傘と洋傘

 055.パジャマの好み

 054.歯は磨いたか

 053.座布団まめ知識

 052.比較的革を選ぶ理由

 051.歩くための靴

 050.カーテンも衣替え

 049.石ころころり

 048.電子本と未来の生活

 047.葉っぱの香をお取り寄せ

 046.今日は自転車

 045.Vintage Apple

 044.手塩にかける曲げわっぱ

 043.デスクトップのコモノ

 042.小春日和の雑貨

 041.鉄瓶えらび

 040.現代はりばこ事情



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 デパートの伝統工芸展で、鉄瓶を買ってきた。いつか盛岡へ選びにいくのを楽しみにしていたが、越した家の水道水がどうにも金気がつよいので、南部行きを待てなくなった。毎日のお茶はたいせつだ。

 いまでこそ「工芸品」の鉄瓶も、かつては庶民の道具であった。南部藩では、京から呼ばれた茶釜職人が、18世紀のはじめころ、煎茶の起こりをきっかけに、茶釜を小ぶりに改良したのがはじまりで、茶の湯と無縁な町人や農家のいろり端まで広まった。全体の工程は、砂と粘土で型をつくった外型の内部に、薄い和紙にデザインした文様を貼り付けて写す。中子(なかご)と呼ばれる内型を入れて、溶かした鉄を注ぐ。固まったら素焼きして、漆で色をつければ出来上がり。盛岡やおなじく岩手の水沢市、山形市もまた、もともと原料の砂鉄や錆び止めと着色を兼ねる漆、燃料の炭などの産地に恵まれた土地柄だ。いまでも鋳型をつくる川砂や粘土は地元で調達できる強みが、職人を支えている。7月はじめ水沢の鋳物まつりや、10月なかばの盛岡南部鉄器まつりは、いつかぜひとも行きたいものだ。

鉄瓶の種類  http://www.kougei.or.jp/crafts/0801/special/sort2.html
 
 ずらりと並んだ鉄瓶の形と文様の組みあわせは限りない。黒っぽいのから薄茶まで、漆の色合いもさまざまだ。丸形、鉄鉢、ひらべったい布団形に柚子形など。米沢の馬喰が好んだという富士形はいかにも派手だ。松葉や柏葉、手毬など、文様も地味な地紋が今好み。馬や鶴など動物や松竹梅のめでたい柄は、少なくなってきたらしい。一番人気のボツボツした霰(あられ)文は、一粒ずつ手で押すという。蓋の取っ手も松ぼっくりや竹の節など、ちいさい趣向が凝らされている。

zakkers http://www.zakkers.com/ketoru/tetubin_ind.htm
炭の屋  http://www.suminoya.com/p/hibachi/nanbu/iron01.html
月山堂 http://gassando.reform.ne.jp/tetubin.html
チアス  http://www.cusi.ne.jp/cheers/od_tetu1.html
斉明堂  http://www.saimeido.com/sa_sale04.html

 大きさや蔓のデザインもお好み次第、銅の蓋など上にもいろいろあるけれど、「一生モンだからね、値段じゃないよ、気に入ったのを選んで」というおばさんのアドバイスに従って、いちばん無骨なのに決めた。ややこしそうな扱いも「まいにち使ってればいんだから」と心強い。「貧血も治っちゃうから」とおじさんも熱心だ。水を残さず、洗わないこと。

鉄瓶の手入れ http://www.kougei.or.jp/crafts/0801/special/care.html
 
 中にも漆が塗ってあるので、3度ばかり沸かし替え、茶葉を煮立てて金気を除けばさっそくおいしいお湯が沸く。ずっしり重い鉄だから、あたたまるのは多少おそいが、保温力の違いだろうか、たっぷりの水を沸せばアルマイトの薬缶を凌ぐスピードだ。お茶はもちろん、冷めにくいので、酒のお燗にぴったりという冬にうれしい余禄つき。すっかり鉄器の贔屓になって、今日も欠かさず晩酌とお茶を一服、酔い覚めの水もまたうまい。 (本間さとみ)