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デパートの伝統工芸展で、鉄瓶を買ってきた。いつか盛岡へ選びにいくのを楽しみにしていたが、越した家の水道水がどうにも金気がつよいので、南部行きを待てなくなった。毎日のお茶はたいせつだ。 いまでこそ「工芸品」の鉄瓶も、かつては庶民の道具であった。南部藩では、京から呼ばれた茶釜職人が、18世紀のはじめころ、煎茶の起こりをきっかけに、茶釜を小ぶりに改良したのがはじまりで、茶の湯と無縁な町人や農家のいろり端まで広まった。全体の工程は、砂と粘土で型をつくった外型の内部に、薄い和紙にデザインした文様を貼り付けて写す。中子(なかご)と呼ばれる内型を入れて、溶かした鉄を注ぐ。固まったら素焼きして、漆で色をつければ出来上がり。盛岡やおなじく岩手の水沢市、山形市もまた、もともと原料の砂鉄や錆び止めと着色を兼ねる漆、燃料の炭などの産地に恵まれた土地柄だ。いまでも鋳型をつくる川砂や粘土は地元で調達できる強みが、職人を支えている。7月はじめ水沢の鋳物まつりや、10月なかばの盛岡南部鉄器まつりは、いつかぜひとも行きたいものだ。 鉄瓶の種類 http://www.kougei.or.jp/crafts/0801/special/sort2.html ずらりと並んだ鉄瓶の形と文様の組みあわせは限りない。黒っぽいのから薄茶まで、漆の色合いもさまざまだ。丸形、鉄鉢、ひらべったい布団形に柚子形など。米沢の馬喰が好んだという富士形はいかにも派手だ。松葉や柏葉、手毬など、文様も地味な地紋が今好み。馬や鶴など動物や松竹梅のめでたい柄は、少なくなってきたらしい。一番人気のボツボツした霰(あられ)文は、一粒ずつ手で押すという。蓋の取っ手も松ぼっくりや竹の節など、ちいさい趣向が凝らされている。 zakkers http://www.zakkers.com/ketoru/tetubin_ind.htm 炭の屋 http://www.suminoya.com/p/hibachi/nanbu/iron01.html 月山堂 http://gassando.reform.ne.jp/tetubin.html チアス http://www.cusi.ne.jp/cheers/od_tetu1.html 斉明堂 http://www.saimeido.com/sa_sale04.html 大きさや蔓のデザインもお好み次第、銅の蓋など上にもいろいろあるけれど、「一生モンだからね、値段じゃないよ、気に入ったのを選んで」というおばさんのアドバイスに従って、いちばん無骨なのに決めた。ややこしそうな扱いも「まいにち使ってればいんだから」と心強い。「貧血も治っちゃうから」とおじさんも熱心だ。水を残さず、洗わないこと。 鉄瓶の手入れ http://www.kougei.or.jp/crafts/0801/special/care.html 中にも漆が塗ってあるので、3度ばかり沸かし替え、茶葉を煮立てて金気を除けばさっそくおいしいお湯が沸く。ずっしり重い鉄だから、あたたまるのは多少おそいが、保温力の違いだろうか、たっぷりの水を沸せばアルマイトの薬缶を凌ぐスピードだ。お茶はもちろん、冷めにくいので、酒のお燗にぴったりという冬にうれしい余禄つき。すっかり鉄器の贔屓になって、今日も欠かさず晩酌とお茶を一服、酔い覚めの水もまたうまい。 (本間さとみ) |
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